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第26回 配偶者の税額軽減を検討してみよう

相続税対策を考える場合に、「配偶者の税額軽減措置」があります。これは相続税の税額計算時の控除の1つですが非常にパワフルな制度で、夫を亡くした妻と妻を亡くした夫の双方に適用することができます。具体的には、配偶者の税額軽減は1億6000万円か法定相続分のどちらか高いほうの金額について相続税が非課税となるものです。相続税の申告時に、配偶者の税額軽減の適用を申請する必要がありますが、その結果、相続税がかからなくなったり、非常に少額になったりする可能性があります。この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されます。したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりませんので注意が必要です。

具体的な例を使って、この配偶者の税額軽減を見ていきましょう。

佐々木さん一家は、お父さんとお母さん、男の子1人、女の子1人の4人家族だったとします。このたび、不幸にもお父さんがお亡くなりになりました。その時点のお父さんの遺産の総額は2億円だったとします。また、簡単化のために遺産はすべて現金預金だったとします。このケースでは、法定相続人は、お母さんとお子さん2人の合計3人となります。この3人の相続税を最大限に少なくするためには、配偶者の税額軽減を最大限利用します。配偶者の税額軽減は、1億6000万円か法定相続分のどちらか高いほうの金額について相続税が非課税となりますので、1億6000万円とお母さんの法定相続分1億円(2億円×1/2)のどちらか高い方である1億6000万円をお母さんが相続し、残りの4000万円を子供2人が相続することになります。つまり、子供は、それぞれ2000万円ずつ相続します。この場合、お母さんには配偶者の税額軽減により相続税はかかりませんが、お子さんにはそれぞれ270万円ずつ、合計540万円の相続税がかかってきます。この額は、法定相続割合で、お母さんが1億円、残りの1億円を子供2人がそれぞれ5000万円ずつ相続した場合の相続税合計の1,350万円と比べて810万円節税したことになります。配偶者の税額軽減を最大限利用した結果810万円節税できたことになります。

このように配偶者の税額軽減を最大限利用することで相続税は削減できるわけです。ただ、この方法はお父さんが亡くなった1次相続だけを考えるとそうなのですが、何年か先にお母さんが亡くなった時の2次相続を考えると、2次相続時には配偶者の税額軽減は使えなくなりますので、1次相続と2次相続の相続税を合計するとかえって1次相続時に法定相続割合で相続をしておいた方がお得だったということもありえますので注意が必要です。特に、お父さんが亡くなってすぐにお母さんが亡くなるとお母さんが相続したお父さんの相続財産がほとんどそのまま2人のお子さんに相続されることになり、相続税が高くなってしまう可能性があります。

従いまして、家族構成にもよりますが、配偶者の税額軽減を最大限利用するかどうかの意思決定は税理士さんの意見も聞いて決められるのが良いと思います。

令和2年11月12日(木)

公認会計士

小林茂夫

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