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第23回 子供が必要な時に住宅購入の資金援助をしよう

日本のような高齢者社会においては、親の資産を子供に移すタイミングを十分考える必要があります。相続の時まで資産の承継を待っていると親が90歳で亡くなり相続が生じた時には子供は60歳を超えているということもめずらしくなくなるでしょう。60歳をこえてから子供が多額の資産を相続してもすでに子育てが終了して、住居も購入済で、その相続した資産を有効に活用できないかもしれません。親の年齢と子供の年齢にもよりますが、親に経済的な余裕があるのであれば、子供が資金的な援助を必要としているときに子供に資産を移すのが良いと思います。子供への援助には、学費の援助、結婚資金の援助等さまざまな場面があるとは思いますが、ここでは、人生で最大の買い物である居住用資産、つまり、子供が家を買う時を考えてみたいと思います。

先ほどの例では、相続時点の親が90歳になる30年前は、親が60歳で子供が30歳です。30歳という年齢は、子供は結婚して子供ができてきたので、そろそろ賃貸を脱出して、マイホームに引っ越したいと思っているかもしれません。そういうときに子供に居住用資産の資金援助をすることができれば、子供は親に感謝するでしょうし、親から子供に移転した資産が有効に活用できることになると思います。それでは、子供が家を購入するときに親としてはどのような資金援助の方策があるでしょうか?ここでは、その資金援助の選択肢を列挙しそれぞれについて説明することで、読者の経済状況に応じて最適な方策を選んでいただきたいと思います。

子供が家を購入するときに、親としてその購入資金の全部または一部を資金援助する方法には一般的には次の2つの方法があります。

1) 親の出した資金を親の名義にする方法

2) 親の出した資金を子供への贈与とする方法

ではこの2つの方法についてそれぞれみていきましょう。

まず、親の出した資金を親の名義にする方法ですが、これにはさらに次の2つのケースが考えられます。親が、子供の家の購入資金の全額を出すのか、一部を出すのかという分類です。一部を出す場合には、親が家の購入資金の頭金を出し、子供が残額について住宅ローンを組むというのが典型的なケースになると思います。整理すると次のようになります。 

・親が親の名義で家の購入資金の全額を出し、子供がそこに住む方法

・親が親の名義で家の購入資金の1部を出し、子供との共有名義にする方法

親が親の名義で家の購入資金の全額を出し、子供がそこに住む方法というのは、簡単に言えば、親が子供に子供が住むための家を買ってあげるということです。相当に親に資金力がないとできない方法ですが、富裕層の中にはこのような方策がとれる方があるかもしれません。親が親の名義で家を買うので贈与の問題は出てきませんし、子供がそこに住むだけであれば使用貸借なのでこれも贈与の問題は出てきません。固定資産税を子供に負担してもらえば、親としてそれ以降の金銭の負担はなくなりますし、また、固定資産税の負担程度は使用貸借の範囲内であると解されていますので、使用貸借で問題ないわけです。また、この方法は、実質的には相続税対策にもなっています。たとえば5千万円の家を親の名義で買って、子供が使用貸借で使用し、親が亡くなったときに相続財産として相続すれば、5千万円が現金で相続財産になる場合と比べて、不動産の相続税評価額は現金よりもかなり低くなりますので相続税の負担が低くなります。ただ、子供が複数人いる場合は、一人の子供だけに家を買ってあげるのは兄弟で揉める原因となりますし、他の子供の家の購入資金負担をどうするかということも併せて検討する必要があります。また、遺言書により、その子供のための居住用資産はその住んでいる子供に相続させるということを明確にしておく必要があると思います。

親が親の名義で家の購入資金の1部を出し、子供との共有名義にする方法は、より現実的で使い勝手が良いと思います。前述しましたように、典型的には、親が家の購入資金の頭金を出し、子供が残額について住宅ローンを組むというのが一般的なケースになると思います。たとえば5千万円の家を子供の使用目的のために購入する場合、2500万円を親が資金提供し、2500万円を子供が住宅ローンを組んで将来に渡って返済していくようなケースが考えられます。その場合、この家の所有権の登記については、親が50%で子供が50%というように資金の拠出割合で持分を登記します。そうすると、親子間の贈与というような問題は出てこないですし、購入後は使用貸借で子供が住み続けて、親が亡くなったときにその親の持分を子供が相続するという流れは、前述の親が親の名義で家の購入資金の全額を出す場合と同じです。相続税対策にもなる点も同様ですので、非常に有効な方法であると言えます。この方法の良い点は、親の資金負担が前述の親が親の名義で家の購入資金の全額を出す場合に比べて半分になり、資金を出しやすいことがあります。また、子供の方にしても、全額家の購入資金を親に出してもらうのは、親の家に住まわせてもらっている感が強いかもしれませんが、この50%を住宅ローンを組む方法ならば、自分も資金を負担しているので自分の家を持った感覚がより強くなると思います。また親から残りの持分を相続するまでずっと親に感謝の気持ちを持つかもしれません。その意味で、この方法は、円満な親子関係を保つには良い面があると思います。この例では、2500万円を親が資金提供し、2500万円を子供が住宅ローンを組んで将来に渡って返済していくようなケースで所有権の登記については、親が50%で子供が50%のケースを説明しましたが、この金額の持分割合は、親の資金力と子供の住宅ローンの借入能力を勘案して、親60%で子供40%とか、親30%で子供70%とか、臨機応変に決めればよいと思います。その資金の拠出割合で持分を登記すれば贈与の問題は生じません。

以上、親の出した資金を親の名義にする方法について説明してきましたが、次に、親の出した資金を子供への贈与とする方法についてみていきましょう。つまり、住宅取得資金を子供に贈与する方法です。次回詳しく解説します。

令和2年10月30日(金)

公認会計士

小林茂夫

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