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第9回 遺言書は自分で書こう

遺言書というと面倒くさいイメージがあります。その大きな原因として、自分で書く遺言書(自筆証書遺言といいます)は従来は遺言書本文だけでなく、相続財産の目録もすべて自筆で書く必要があったからです。現預金という金融資産ひとつとっても預けている銀行の数は変動するかもしれないですし、また、自宅等の不動産も買い替えや引っ越し等があれば変わっていきます。そのたびに自筆で書き直さなければならないとなると、いちいち面倒なので、まあいいかという気になってしまいますよね。

しかしながら、相続法が改正されて、この全文自筆という要件が大きく緩和されました。遺言書に添付される相続財産の目録については自書することを要しないとされたのです。つまりパソコンを使って目録を作成し、それを遺言書に添付すればよくなりました。いったんエクセル等の表計算ソフトを使用して相続財産の目録を作成しておくと、次年度以降はそれを簡単に更新していくことができます。ただし、遺言者はその目録の各ページに署名し、印を押さなければならないとされています。でも自書するのが遺言書の本文だけでよいので、ずいぶんと遺言書の作成は楽になりました。

表計算ソフトで相続財産の目録を作成するのが面倒な方は預金であれば預金通帳のコピー、不動産であれば不動産登記の全部事項証明書のコピーを添付しても良いとされています。ただし、この場合も、遺言者はそのコピーの各ページに署名し、印を押す必要がありますので注意が必要です。

ここで使用する印鑑ですが、法律的には、遺言書本文に使用した印鑑と財産目録に押捺する印鑑は同一でなくてもよいとされています。また、遺言書本文と目録との契印も不要とされています。しかしながら、遺言書の偽造、変造等の紛争を防ぐ目的からは、改正民法の定めに関わらず、遺言書本文に使用した印鑑と財産目録に押捺する印鑑は同一の印鑑を使うことが望ましく、また、契印も押捺しておくべきだと思います。

このように自筆証書遺言書の要件が著しく緩和されたわけですから、これを利用しない手はありません。ぜひご自分で、遺言書の作成にトライしてください。本屋さんに行けば、自分でできる遺言書作成キットが購入できます。このようなキットを使えば簡単に遺言書を作成することができると思います。子供たちを無益な争いに巻き込まないためにも遺言書をご自分で作成されることをお勧めします。

参考までに、自筆証書遺言の例を掲載しておきます。これを参考にぜひ遺言書を作成してみてください。

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遺言書

遺言者、田中一郎は、本遺言書により、以下のとおり、遺言者の遺産について、遺言する。

一 別紙目録1に記載の不動産及び別紙目録3に記載のAA銀行BB支店の普通預金債権を遺言者の妻明子(昭和31年12月2日生)に相続させる。

二 別紙目録2に記載の不動産及び別紙目録3に記載のCC銀行DD支店の普通預金債権を遺言者の長男和夫(昭和58年1月25日生)に相続させる。

令和2年X月X日

  住所  東京都渋谷区XX5丁目4番3号

  遺言者 田中一郎 ㊞

       (昭和31年5月15日生)

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別紙目録1 (パソコンにより作成)

 一 土地

      所在   東京都渋谷区XX5丁目

      地番   43番2

      地目   宅地

      地積   254.38平方メートル

 二 建物

       所在   東京都渋谷区XX5丁目4番3号

      種類   居宅

      家屋番号 3000番

      構造   木造瓦葺2階建

      床面積  一階 68.42平方メートル

           二階 65.52平方メートル

  遺言者 田中一郎 ㊞

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別紙目録2 (パソコンにより作成)

 一 土地

      所在   大阪市西区XX5丁目

      地番   43番2

      地目   宅地

      地積   254.38平方メートル

 二 建物

       所在   大阪市西区XX5丁目4番3号

      種類   居宅

      家屋番号 3000番

      構造   木造瓦葺2階建

      床面積  一階 68.42平方メートル

           二階 65.52平方メートル

  遺言者 田中一郎 ㊞

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別紙目録3 (パソコンにより作成)

 一 AA銀行BB支店 普通預金

 二 CC銀行DD支店    普通預金

  遺言者 田中一郎 ㊞

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また、後ほど詳しく述べますが、相続法の改正に伴って、法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下、遺言書保管法という)ができ、これにより、2020年7月10日から遺言書保管制度が始まります。これは、皆さんが書いた自筆証書遺言を法務局が保管してくれるというものです。法務省のHPには、「遺言書の様式の注意事項」が掲載されていますので、遺言書作成の際はぜひ事前に一読してください。参考までに下記にリンク先をお知らせしておきます。


http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00057.html

遺言書を書いたけど、どこに保管しようかと保管場所に困るケースも多いですよね。銀行の貸金庫をかりるのも煩雑ですし、それが原因で遺言書を書くのを躊躇するケースもあるかもしれません。そんな場合もこの遺言書保管制度を利用すれば便利です。ぜひ検討してみてください。 

令和2年9月29日(火)

公認会計士

小林茂夫

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