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第5回 デジタル資産の相続を考えてみよう

皆さんがデジタル資産を保有していた場合、皆さんがお亡くなりになったら、皆さんのインターネットの銀行口座に、残された奥さんやお子さんはどのようにアクセスすればよいでしょうか? また、インターネットの証券会社に保有している証券口座も同様です。ネット上で証券取引をなさっている証券口座があった場合、残された奥様やお子様はこのインターネットの証券口座に預けていた株式や預け金にどのようにアクセスすればよいのでしょうか?

デジタル資産は便利なものですが、いざ相続となるといろいろと問題が出てきます。デジタル資産の存在自体が、口座を開設したご本人しか知らない場合も多く、そもそも相続が起こった時に、相続人の方がデジタル資産の存在に気づかない可能性があります。気づかれずに放置されたデジタル資産はどうなるのでしょうか?

たとえば銀行預金の場合、相続人の方がその預金の存在に気づかないで放置された場合は、そのまま10年間は口座に預金は残ります。銀行預金は、銀行に対する預金債権ですので時効があります。銀行に対して預金の払い戻しを請求しないということは、預金債権を行使しないということですから、その預金債権は10年で時効消滅することになります。そのようなことになったら、せっかく苦労して貯めたお金なのにもったいないですよね。そうならないために注意が必要です。

このような放置されたデジタル資産には別の問題もあります。そのデジタル資産の維持のためにコストがかかる場合があるのです。たとえば、デジタル資産として投資信託を保有している場合では、その投資信託を解約しない限り信託報酬がかかってくることになります。相続人の知らない間にデジタル資産が目減りしていくことも考えられます。

昔は、通帳や銀行印の存在や銀行からの通知が郵便で来たので、相続人が銀行口座の存在を把握することができたのですがデジタル資産の手続きの多くは、パソコンやスマホで完結してしまい郵送による通知等は限られたものになります。そのため、デジタル資産の場合は、相続人の方に存在がわからないというケースが多くなってきていると思われます。 また、お子さんの立場からすると、親がネットで金融取引をやっていたことを知っていたとしても、ログインIDやパスワードがわからないのでデジタル資産にアクセスできないかもしれません。

そのようにならないために重要なことは、あなたのデジタル資産の存在を相続人、つまり奥さんやお子さんに生前から認識しておいてもらうことが必要です。たとえば、銀行や証券口座ごとのログインIDとパスワードを記載したリストを作成して、そのリストの保管場所を奥さんやお子さんに伝えておくというのも一つの方法かもしれません。ただし、お子さんがあなたに成りすまして預金を引き出すことも可能ですから、そのあたりはお子さんがどの程度信頼できるかによるかもしれません。

私がお勧めしたい方法は、遺言書を作る場合、遺言書に添付する財産目録とは別に、財産目録に記載のデジタル資産の銀行や証券口座ごとのログインIDとパスワードのメモを作成しておいて安全な場所に保管しておく方法です。そのメモの存在をそのメモの保管場所とともに奥さんやお子さんに伝えておくのがよろしいかと思います。後ほど、詳しく述べますが、相続法が改正され、自筆証書遺言(ご自身で書く遺言書)の要件が緩和されました。今までは、遺言書はすべて自筆によることが必要とされたのですが、この改正によって、遺言書に含まれる財産目録は自筆によらないことが可能になりました。パソコンで財産目録を作成することが可能になりましたので、遺言書に添付する財産目録はパソコンで作成して毎年アップデートしていけば良いと思います。

遺言書に関しては、2020年7月10日からは、法務局で保管してもらえることになりました。あなたの住所地または本籍地を管轄する法務局にご自分で行く必要はありますが、デジタル資産を確実に奥さんやお子さんに認識してもらう方法として最も確実な方法であると思います。法務局に保管してもらいますと保管証を発行してくれます。この保管証と財産目録に記載のデジタル資産の銀行や証券口座ごとのログインIDとパスワードのメモを一緒に保管しておけば、奥さんやお子さんはすぐに相続財産の一覧がわかるのでとても便利だと思います。

奥さんやお子さんの立場からすると、お父さんが日ごろからネットでどの金融機関と取引があるのかを確認しておくことが重要になりますが、親子でお金の話をするのは何となく気がひけるものです。特に、親と子供が離れて暮らしているような場合は、帰省の際にその確認ができればよいのですが、久しぶりに会ってお金の話をするのも何か嫌ですよね。そのような場合でも、法務局が預かってくれるこの遺言の新制度を利用して、保管証と財産目録に記載のデジタル資産の銀行や証券口座ごとのログインIDとパスワードのメモを一緒に保管してもらえば簡単です。この新制度はそのような親子の対話のきっかけにも使えますので検討してみる価値はあると思います。

令和2年9月23日(水)

公認会計士

小林茂夫

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