検索
  • kobayashishigeo

第21回 無解約返戻金型定期保険を活用しよう

生命保険金を相続税対策に利用する場合、その目的として、相続税の対象財産を減少させることと相続税の納税資金を確保することがあげられます。たとえば、土地建物等の不動産をお子さんが購入する際に資金援助目的で、援助した資金部分を共有登記にしているケースがあります。親が購入価額の50%の現金を拠出し、お子さんが住宅ローンを組んで50%の資金を出した場合です。この場合、お子さんの物件は、親50%とお子さん50%の共有登記になっていると思います。遺言書でその親の共有部分の持ち分を子供に相続する場合、金額にもよりますが、お子さんに相続税がかかるケースが出てきます。このような場合に有効な対策の1つとして生命保険金を活用する方法があります。生命保険の選択肢の代表的な商品としては次の2つがあります。

➊一時払い終身保険

❷無解約返戻金型定期保険

これらの保険商品をどのように相続税対策に活用していくかについて具体的な例をあげて解説します。

たとえば、ある相続税対策を検討しておられる60歳のAさんが、私の提供する相続税試算サービスを利用した結果、息子さんの相続税が5百万円と試算されたとします。この場合の息子さんの納税資金の確保の方法としては、以下の3つのパターンが考えられます。

➊ある銀行口座に5百万円を預金しておく。(遺言書でその5百万円を息子に相続させる。)

❷一時払い終身保険5百万円に加入する。(契約者はAさんで保険金受取人を息子とする)

❸無解約返戻金型定期保険に加入し、たとえば90歳まで30年分の保険料を預金しておき自動引き落としで保険料を支払う。(契約者はAさんで、受取人を息子とする)

では、それぞれのケースごとに、そのメリットとデメリットを考えていきましょう。

まず➊の納税予定額の5百万円を預金する方法ですが、保険にも入らず何もしないということですから、メリットとしては、保険料を支払う必要がないということです。また、この預金を遺言書で息子さんに相続させれば息子さんの納税も支障はありません。また、預金ですから、何か資金が必要になったときにいつでも使用できます。まあ、何もしなくて良いですから楽ですし、多くの方が結果的にこの方法で納税資金を対応されているというのが現実ではないでしょうか?


デメリットというわけではないのですが、このパターンだと前述した相続税の非課税枠を使用しませんから、当然のように5百万円の預金残高が相続財産に加算されて相続税を支払うことになります。別に損をしているわけではありませんのでこれは納税資金を預金で息子さんに残してあげるという立派な相続税対策と言えるかもしれません。

次に、❷の一時払い終身保険5百万円に加入する方法です。この最大のメリットは、保険料の一時払いによって相続財産がその保険料を支払った瞬間に5百万円減少します。さらに、相続が起こったときに息子さんが保険金を5百万円受け取ることになりますが、これは非課税枠があるので相続税が課税されません。つまり、相続財産を5百万円減少させると同時に納税資金も非課税で手当てできるというダブルメリットがあるのです。また、終身保険ですので、Aさんがお亡くなりになるまで保険契約は続きますので、いったん一時払い終身保険に加入すると相続対策は万全であると言えるでしょう。したがって、相続対策にこの一時払い終身保険を利用する方は多いようです。さらに、通常は解約返戻金がありますので、Aさんが急遽資金が必要となった場合も安心です。解約返戻金の額は、いつ解約するかによってその額は異なりますが、たとえば、JA共済の一時払い終身保険の場合を例にとりますと、60歳で一時払い終身保険500万円に加入した場合、10年後の70歳時点での解約返戻金は490万円となっていますのである程度まとまった額が手にできます。


デメリットとしましては、一時払いの保険料が高いということでしょうか? たとえば現時点ではJA共済で、60歳時の一時払い保険料として476万円が必要となります。早急に相続税対策でまとまった資金を用意できる場合は、ダブルメリットもありますし、有効な相続税対策となると思います。また、個人的には、後述する無解約返戻金型定期保険と比べますと、契約してすぐにAさんが亡くなった場合、保険コストがかなり割高になる気がします。死亡保険金が500万円出るので別に損をしている訳ではないのですが、少ない掛け金で大きな保障という保険のイメージからは割高に思えるのではないでしょうか?さらに、このマイナス金利の時代ですから、この商品を扱っている保険会社も少なくなってきていますし、高齢になってきますと、一時払い終身保険5百万円に加入するのに保険料が5百万円以上するケースもあるようです。保険コストが高いというのがこの商品の最大のデメリットといえるかもしれません。

最後に、❸の無解約返戻金型定期保険に加入し、30年分の保険料を預金しておく方法です。別に、30年分の保険料を預金しておく必然性はなく、保険料は月払いとか年払いとかできますのでその都度保険料を支払っていけばよいだけの話なのですが、ここでは、前2つのパターンとの比較のためにそのような方法を例示しています。この方法の一番のメリットは保険料が安いということです。たとえば、エヌエヌ生命の無解約返戻金型定期保険を例にとりますと60歳で契約して90歳までの30年間の契約とした場合、現時点では30年間の保険料は年間123,000円ほどであり、30年間の総額で369万円となっています。つまり、369万円をある預金口座においておき、毎年保険料を自動引き落としにすれば、相続対策としては十分です。90歳までの30年間の契約ですが、資金が必要となった場合は、保険契約はいつでも解約できますし、その場合、預金口座の残高は自由に利用できることになります。拘束される預金の額も最初の何もしないパターンの500万円と比較して130万円少なくてすみます。また、Aさんが亡くなった場合に息子さんが受け取った500万円は相続税の非課税枠が使用できるので相続財産に算入されません。加入してすぐにAさんが亡くなった場合は、わずか12万円ほどで息子さんは500万円の保険金を手にすることになり、極めて低コストで500万円の財産が無税で取得できることになります。ここでは、30年間の保険料369万円を保険料の引き落とし専用の別口座に保管することを前提に話していますが、まとまった資金がなければ当座の年払い保険料年間123,000円を用意すればいつでも始められます。つまり、拘束資金のハードルが非常に低いのも特徴です。デメリットとしましては、低額とは言え、毎年保険コストがかかります。保険商品を利用するのですからこれは致し方ないといえるのかもしれませんが。

こうやって比べてみると、一時払い終身保険との比較では❸はメリットがあるような気がします。一時払い終身保険の利用を検討しておられる方は、❸との比較を検討してみたらいかがでしょうか?

令和2年10月26日(月)

公認会計士

小林茂夫

1回の閲覧

最新記事

すべて表示

第27回 小規模宅地の特例を検討してみよう

小規模宅地の特例の適用は、相続税軽減に大きな効果がある特例です。これは、個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額するというものです。

第26回 配偶者の税額軽減を検討してみよう

相続税対策を考える場合に、「配偶者の税額軽減措置」があります。これは相続税の税額計算時の控除の1つですが非常にパワフルな制度で、夫を亡くした妻と妻を亡くした夫の双方に適用することができます。具体的には、配偶者の税額軽減は1億6000万円か法定相続分のどちらか高いほうの金額について相続税が非課税となるものです。相続税の申告時に、配偶者の税額軽減の適用を申請する必要がありますが、その結果、相続税がかか

第25回 相続時精算課税を利用して子供に住宅資金を贈与しよう

相続時精算課税というのは、贈与を受けた時に2500万円までの贈与には贈与税をかけないかわりに、被相続人の死亡により相続が起こったときにその贈与財産について相続に含めて精算するという制度です。2500万円までは贈与税がかからないために大きな金額の贈与をする場合はぜひ検討したい制度です。大きな贈与の例の1つとして、子供が住宅を購入する場合の購入資金を贈与することが考えられます。 この相続時精算課税の特

アクセス

〒160-0023 

東京都新宿区西新宿3-9-7​      BIZ SMART 西新宿

 

電話&ファックス

電話番号  :03-3370-3833

ファックス: 03-3370-3833

連絡先

 kobayashishigeo@ms02.jicpa.or.jp