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第19回 相続時精算課税を活用しよう

相続時精算課税というのは、贈与を受けた時に2500万円までの贈与には贈与税をかけないかわりに、被相続人の死亡により相続が起こったときにその贈与財産について相続に含めて精算するという制度です。2500万円までは贈与税がかからないために大きな金額の贈与をする場合はぜひ検討したい制度です。大きな贈与の例としては、たとえば親が保有するアパートとかマンションの収益物件である不動産を贈与する場合や、自社株をまとめて息子である後継者に贈与する場合等が考えられます。これらの場合には、暦年課税では多額の贈与税がかかってくる可能性があります。

相続時精算課税の特徴は、相続時に精算するわけですが、相続税の計算は贈与時の評価額で計算されることです。つまり、贈与時より相続時に評価があがっている財産であれば大きなメリットとなります。たとえば将来値上がりが期待される株式や不動産の贈与は効果的な相続税対策となります。

相続時精算課税は、最終的に相続時に精算されるので贈与税が免税になるわけではありませんが、富裕層が収益用不動産を早めに子に譲りたい場合や事業承継を進めたい場合には有力な選択肢の1つになります。たとえば、事業承継についてですが、生前に自社株を後継者に贈与し議決権の割合を集中させたい場合、暦年贈与であれば贈与税の負担が大きくなる可能性がありますが相続時精算課税を利用すれば、2500万円までは非課税ですし、2500万円を超えた部分も贈与時は一律20%の税金で済むことになります。このように相続時精算課税は、大きな金額の贈与をしたい場合には選択肢に入れることができます。

この相続時精算課税の適用上の注意点としましては、以下の点が挙げられます。


1) 贈与者は60歳以上の直系尊属、受贈者は20歳以上(令和4年4月からは18歳以上)でなければなりません。


2) 贈与財産は相続時に相続税の課税価額に算入されますので、相続税の納税資金の準備が必要となります。


3) 贈与財産は相続時に小規模宅地の特例を受けることができません。宅地を贈与する場合には留意する必要があります。


4) 一旦、相続時精算課税を選択すると暦年課税に戻ることはできなくなります。暦年課税の110万円の基礎控除額の使用ができなるのです。つまり、暦年課税が有利な状況になっても変更できません。


5) 贈与財産が相続時に値下がりしていると相続税の負担が増えて増税になる可能性があります。

以上、ご説明してきましたが、相続時精算課税制度は、結局は課税の相続時までの繰り延べにすぎず使い勝手が悪いように思われるかもしれません。それでは、相続時精算課税を使うのが有効なケースとはどんなケースでしょうか?次のようなケースが考えられます。

1) 相続財産が基礎控除におさまる場合

相続財産が基礎控除におさまる場合は、そもそも相続時に相続税がかかりませんので、資産を有効活用したい場合は、相続時精算課税制度を利用して早めに財産を子供に移すことができます。たとえば、奥さんと子供2人の場合、基礎控除額が3000万円+600万円×3で、4800万円となりますので、相続財産が4800万円までであれば相続税はかかりません。したがって、相続時精算課税制度を利用して、2500万円までの財産を早めに子供に移しても、贈与税も相続税もかからないことになります。

2) 収益性不動産を手放したいケース

富裕層で収益性不動産を複数もたれているケースでは、相続時までに相続財産がどんどん増加してしまうケースがあります。そのため、相続財産を少しでも減らすために相続時精算課税制度を利用して早めに収益性不動産を子供や孫に贈与することが考えられます。それらの不動産を贈与した後は収益が子供や孫のものになり相続財産の増加を防ぎます。

3) 将来値上がりする可能性のある資産を移したいケース

先ほども書きましたが、将来有望な事業をしている場合の事業承継のケースがあります。将来有望な事業をしている場合は、自社株の価額が将来高くなり相続税評価額が高くなり多額の相続税がかかってしまうかもしれません。そのような場合は、自社株の評価の低いうちに後継者に贈与しておけば、相続が発生しても贈与時の価額で自社株が評価されるので、有効な相続税対策となります。

令和2年10月20日(火)

公認会計士

小林茂夫

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