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第14回 配偶者控除特例を活用しよう
配偶者に居住用不動産や居住用不動産の取得のための金銭を贈与した場合、前述しました基礎控除の110万円のほかに最高2,000万円までの控除(これを配偶者控除といいます)ができる規定があります。この配偶者控除特例は、相続開始前3年以内の贈与であっても、相続税の課税価格に足し戻しされることはないので有効な相続税対策となります。
この配偶者控除特例を使うには、次のような一定の要件が必要となります。
1) 婚姻の届出をした日から、居住用不動産を贈与した日までの期間が20年以上の夫婦であること
2) 配偶者から贈与された財産は、国内にある居住用不動産又は国内にある居住用不動産を取得するための金銭であること
3) 贈与を受けた者は、贈与を受けた年の翌年の3月15日までその居住用不動産に居住し、かつ、その後も引き続き居住する見込みであること。金銭の贈与の場合は3月15日までにその金銭をもって居住用不動産を取得して居住の用に供すること
4) 過去に、この配偶者からの贈与について、配偶者控除の規定の適用を受けていないこと。つまりこの特例は、一生に1度しか使用できないので注意が必要です。
また、この規定を適用すると、贈与税については2000万円部分までは控除されますが、登録免許税や不動産取得税は別途課税されます。この登録免許税と不動産取得税に関しては、次のように相続の場合よりも贈与の場合の方が高くなりますので注意が必要です。
1) 登録免許税
相続の場合 固定資産評価額の0.4%
贈与の場合 固定資産評価額の2.0%
2)不動産取得税
相続の場合 非課税
贈与の場合 固定資産評価額の3.0%
さらに、居住用不動産である土地等を贈与により取得した場合には、その土地等は相続時において小規模宅地の特例を受けられなくなります。小規模宅地の特例は贈与の場合には適用がないのです。
以上から、配偶者控除特例の利用を検討する場合には、前述した登録免許税と不動産取得税の負担増と小規模宅地の特例の不適用を十分に考慮して実施するべきかを決める必要があります。むしろすぐに贈与をすることなく、相続まで待って、相続による居住用不動産の配偶者への移転の方が有利なことが多いと思います。最近の相続税法の改正によりまして、配偶者居住権も選択肢に加わりました。従いまして、この特例を使用するケースは、配偶所の居住用不動産の取得のために金銭を贈与する場合にのみ検討することが最も有効かもしれません。
令和2年10月7日(水)
公認会計士
小林茂夫