00.5.7
■まずいのにつぶれない店
食べ物やでおいしいお店というのは、はっきり言えば、あたりまえなわけで、まずければ自然とつぶれていくはずです。
お金を貰って食べ物を提供するというのは、プロですから、うまくて当たり前な訳ですが、逆に、まずいのにつぶれない店というのは、ある意味で凄いのではないかと思います。
私の知っている店でまさに、この「まずいのにつぶれない店」というのがあります。
この店は、とんかつとカレーの店で、飲食店が入っている長屋形式の建物の中にあります。店員は、コックさん一人だけでこの人が店主です。カウンターに5人ぐらいと後、4人がけのテーブルが3卓あります。
最近のとんかつ専門店は、おいしい店が多く、ファミレスのとんかつでもそこそこおいしかったりします。でもここのとんかつは、まずいのです。まず、衣がふわふわしていなくて、まるで一日たったフライをレンジで温めなおしたようです。肉もまずいし、ソースも普通のウスターソースで何の工夫もありません。
又とんかつ定食は、味噌汁とサラダがつくのですが、この味噌汁がまたまずいのです。さらにサラダにいたっては、ドレッシングがまったくとんかつとあわず、わざとまずくしているのではないかと思うぐらいです。
もしかするととんかつは得意ではないのかと思い、カレーも食べてみたのですが、これもひどい。カレーなんてまずく作るほうが難しいと思うのですが。又、私がおかしいのではないかと思い、他の人も誘ってみたのですが、みんな私と同じでした。
で、これだけまずいのに、この店はもう15年以上、同じ場所で生き残っているのです。これはもう驚異といって良いのではないでしょうか。例えば、自宅で営業しているのなら、それもあるかもしれません。でもこの店は賃借料を払っている訳ですから、まずくても食べてくれるお客さんがちゃんといるということです。
例えば、店主の話術が巧みだとか、人柄が良いということがあるかもしれませんが、ここの店主は、愛想が悪くほとんど客としゃべりません。
では、何故、この店はつぶれないのでしょうか。
実は、この店がつぶれないのには、理由があります。
この飲食店長屋は、全部で5件ほどですが、その内、食べ物屋はこの店を含めて2件だけで、他はスナックです。
もう1件の食べ物屋は、非常においしい店で、特に「コロッケ定食」など絶品です。ただこの店は、夫婦でやっているのですが、この夫婦の態度が悪く、自分の店の味にあぐらをかいているのか、客への対応が大変横暴で、はっきり言ってむかつきます。
ある時など、満員で空いている場所がカウンターに一箇所しかないので、その場所に座ったら、そこへは座るなと命令口調で言われました。イスがあるからすわったのに何で、怒られるのかと怪訝に思っていたら、「そこは料理を出す場所だから邪魔だ。そんなことはうちへ来る客はみんな知っている。」というのです。だったらいすなんかおくなと文句を言って退店しました。で、そんな時、どうするかというと、隣のまずい店に行くのです。この店はまずいのですが、いつもすいているので、ゆったり座れるし漫画を読みながら、食べていても怒られることもありません。
むかつくのを我慢するより、まずいのを我慢する方がまだましです。
でもこんな理由で他のお客さんもこの店へ来るとは思いません。実は、この店がつぶれないのは、向かい側に町の中央郵便局があるからなのです。この郵便局は非常に大きく何十人も局員がいます。それに対して、近くに食べ物屋は、この長屋の2件しかなく、局員はまずくてもこの店にこざるを得ないのです。
つまり、郵便局がこの店を救っているのです。
でも、余計なお世話かもしれませんが、何故、この店主は、皆がまずいと思う料理を、おいしくしようとしないのでしょうか。そちらの方がつぶれないことよりも不思議かもしれません。